わたしは障害者のための就労継続支援事業所(A型)の利用者(メンバー)のひとりとして、ふだんは事業所内でIT関連の業務をおこなっております。
朗真堂では基本的にわたしたち利用者が主体的に業務をおこない、スタッフは主にそのサポートをするかたちで活動しております。
朗真堂のおこなっているビジネススタイルは、いま欧米ですでにポピュラー化されている「ソーシャル・ファーム」だと考えております。
わたしは朗真堂を利用して3年近くになりますが、その活動のなかからソーシャル・ファームの社会的有益性を痛感してきました。
そのようなことから、ソーシャル・ファームの内側にいるにんげんとして、その実態を広く一般のかたがたにも知っていただきたいと考えるに至りました。
このイベントは、わたしを含む利用者自らが企画・立案し、上映映画の手配、講演者・シンポジストの選考および出演交渉、会場の確保、後援依頼など、ほとんどすべての準備活動に携わっております。
ソーシャル・ファームが一体どんなものなのか前提知識のないかたでも、すんなり概要が理解できる内容になっております。
どうかみなさんお気軽にご参加ください!
「ソーシャル・ファーム」の定義
日本国内においては明確な定義が存在しないというのが現状です。
ただ、海外のソーシャルファームの特徴としては、以下の共通点が見られます。
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障害のある人々や労働市場において不利があるその他の人々を雇用するためにつくられている
障害などが原因で仕事に就くことが難しかったり、継続することが困難なひとに仕事を与え、労働を通じて「活きがい」を感じられるような社会的使命を持つということです。
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企業的な目的・活動を行っていること
通常の自由市場で競いうるだけのクオリティーを追求した商品の製造やサービスを提供することも特徴と言えます。
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全ての従業員が、同じ雇用の権利と義務をもつ
労働の機会は不利な立場にある従業員と不利な立場にはない従業員とに平等に与えられるという点も大きな特徴です。
「ソーシャル・ファーム」の歴史
1970年ごろ北イタリアの精神病院で始まったと言われています(「ソーシャル・コーポラティブ(社会的協同組合)」と呼ばれています)。
当時、治療や入院が必要なくなった当事者が地域に戻り仕事に就こうとしても、多くの差別や偏見でそれが叶えられることはほとんどありませんでした。
「それでも働きたい」、そういう想いが1つになり、病院の職員と当事者自身がいっしょに企業を立ち上げるに至りました。
自分たちの仕事は自分たちで生み出す、これがソーシャル・ファームの始まりです。
このスタイルは1980年代になって徐々ににヨーロッパ各地に広がっていきました。
しかし日本においては、ソーシャル・ファーム、あるいはそれに類似する取り組みがいくつかなされていますが、現時点ではまだ知るひとぞ知る存在にとどまっています。
日本における「ソーシャル・ファーム」発展の意義
現在日本での障害者就労は、おもに障害者雇用率制度に基づいて一般企業等に就労する「一般就労」と、障害者総合支援法に基づき、社会福祉法人などの運営する就労継続支援事業所等で就労する「福祉的就労」に二分化されています。
しかしハローワークや特別支援学校などの紹介で一般就労に就く障害者を受け入れる十分な労働環境が準備されている企業は少なく、せっかく一般企業での就労を果たしても、すぐに辞めてしまう例が少なくありません。
また、福祉的就労に満足せず、より高いレベルで働きたいという障害者も、現状では敷居が高い一般就労を目指すしかほとんど道がなく、そのような向上心を持った障害者の大きな障壁になっているという現状があります。
ソーシャル・ファームはそのような「制度のはざま」にいる障害者の重要な受け皿になる可能性を秘めています。